社会

アフリカの貧困はいつ解決を見るのか?ユニセフの見解

先進国の経済成長が低調に推移するなかにあって、全世界規模でみるとアフリカ大陸諸国の経済成長の目覚ましさは近年注目を集めています。
全世界の面積の20%を超える広さを有しており、国連加盟国の中でも54か国と全加盟国の27%以上を占めるほどで国際的にも存在感を増してきました。
人口レベルでは2006年時点では約9億人と世界人口の14%を占めていましたが、その後も人口増加ペースは上がり続けており2050年には全世界の20%を占めることになると推測されています。

アフリカ大陸の貧困問題は相変わらず深刻

しかしアフリカ大陸といえば貧困問題は相変わらず深刻で、1日1ドル以下の最貧困レベルでの生活を余儀なくされている人は、2004年時点で全人口の40%を超えており最も深刻な18か国では飢餓率は35%を超える状況です。
他方で2004年から2006年にかけてのGDP平均成長率は平均5%超えの数字を記録しており、インフレ率も大幅に改善するなど経済成長に焦点をあてると明るい展望を予想させているのも事実です。
とくに地下資源に恵まれていたり、地政学的に重要な位置にある国の経済成長には目覚ましいものがあり、エチオピアやコンゴ・ルワンダなどの国では世界平均3%のGDP経済成長に対して、2015年では7%以上となっています。

貧困層の増加と格差の拡大

貧富の差

このように急成長を続ける経済活動の陰で進行しているのが、貧困層の増加と格差の拡大です。
この傾向がとりわけ顕著なのがサヘル以南サブサハラ地域、つまりサハラ砂漠より南の諸国になります。
サブサハラ地域の人口は2019年時点で10億人と、中国やインドよりは少ないものの今後も人口増加傾向が継続し2035年には中国とアフリカを抜き2070年には、中国とインドの2倍ほどまで増加するものと見られています。
「アフリカの年」と呼ばれた1960年以降、常にアフリカは貧困問題とむきあい国際的にも巨額の援助が投入されてきたものの、依然として解決を見ていません。
危機の慢性化はさらなる深刻な影響を及ぼしており、様々な局面での新たな課題を持ち掛けています。
貧困の影響を最も受けるのは、年少な子供たちです。

全世界の人口の9%・8億人をこえる人々は深刻な栄養不良の状態にある

特に深刻なのは栄養不良であり、2017年には全世界の人口の9%・8億人をこえる人々は深刻な栄養不良の状態にあり、多くはサブサハラ地域で生活しています。
2017年には15歳未満の子供が栄養不良で落命しており、そのうち5歳未満の子供は9割近くをしめているほどです。
なかでも5歳未満の死因は、敗血症や下痢・肺炎・マラリアなど、普通の医療レベルを備えた環境では治療可能な疾患でした。
栄養失調の脅威は、仮に生き抜いても病気にかかりやすくなるだけでなく知能や身体の成長にも悪影響を与えるリスクが厳然と存在していることにあります。
就学しても先生の言葉が理解できない、集中力にかけるなど平均的な教育を受ける能力そのものも栄養失調で損なわれてしまうわけです。

不衛生な水の問題

水の問題

さらに身体の安全に脅威を与えるのは、不衛生な水の問題です。
2016年には全世界で安全な水を入手できない環境での生活を余儀なくされているのは6億6000万人以上とみられていますが、その多くを占めるのがサブサハラ地域の住民です。
上水道の設備はおろか、満足な下水道設備の整備も一向に進んでいません。
不衛生な環境のため、住民の多くは不潔な川や池に水源を求めるほかなく、ようやく豊富な水源にたどり着いても野生動物の糞尿で汚染あれているのが現状です。
細菌やウイルスなどの病原性微生物に汚染された水を口にすることで、とりわけ免疫機能が不完全な子供では下痢になることがしばしばです。
先進国では下痢が致命的経過をたどることは例外的ですが、サブサハラ地域の子供では下痢が主要な死因の一つになっています。

サブサハラ地域では感染症が現在でも深刻

そしてサブサハラ地域では感染症が現在でも深刻で具体的な脅威となっています。
特にエイズ・マラリア・結核による死亡は依然として高い数値で推移しているのです。
とりわけエイズは同地域の平均寿命を大きくさげる原因となっており、マラウィでは若者の10人に一人は、エイズの原因となるHIVキャリアとみられているほどの状況です。
感染の主な経路は性交渉と母子感染で、コンドームの普及や性教育の啓蒙などにより予防可能なものの蔓延状況を改善するには程遠い状況とみられています。
最近ではHIV感染者の体内で新型コロナウイルスの変種が発生したとみられており、今後も状況を放置すれば全世界規模で公衆衛生上の脅威にさらされるリスクが指摘されています。

まとめ

アフリカの貧困には複合的な要因が関与しており、現在に至るまで慢性化してきました。
明らかなことは現地政府や住民だけの努力では解決困難なレベルにあるということを認識し、何らかの行動に移すことです。
国連でも開発援助額の4割近くを占めており、世界最大の援助対象地域となっています。
私たちができることは、状況を知ることと寄付にあります。
ユニセフなどの国連機関やNGOなどの支援活動への寄付によるサポートは現地住民の生活を守ることに直結するからです。

引用元:日本ユニセフ協会大使を務めたアグネス・チャン