「リサイクルの会社って書いてあるけど、これって産廃の仕事ですか?」
キャリアアドバイザーをしていたころ、工場の求人を紹介すると、こう聞かれることがよくありました。
はじめまして、香取美奈子です。
千葉県市原市に住んでいて、京葉臨海エリアの化学メーカーで人事と採用を12年担当しました。
その後、製造業専門の人材紹介会社で、千葉と北関東の工場求人を扱うキャリアアドバイザーを8年。
いまは独立して、製造業の仕事と転職について記事を書いています。
求人サイトで「リサイクル」と検索すると、ごみの収集運搬、廃棄物の中間処理、スクラップの買取、再生プラスチックの製造まで、性格の違う仕事がまとめて出てきます。
名前が似ているぶん、入社してから「思っていた仕事と違った」となりやすい分野です。
この記事では、国の産業分類と廃棄物処理法をもとに、「廃棄物処理」と「リサイクル製造」の違いを整理します。
そのうえで、求人票や会社のホームページのどこを見れば見分けられるのかを、採用する側にいた経験も交えてお話しします。
目次
国の分類では「サービス業」と「製造業」に分かれている
統計で使う産業の物差しとして、総務省が定めた日本標準産業分類があります。
最新版は2023年7月に改定され、2024年4月から使われています。
この分類で見ると、廃棄物処理とリサイクル製造は、いちばん大きな区分の段階から別の産業です。
5つの分類を並べてみる
プラスチックに関係するものを抜き出すと、次のようになります。
| 大分類 | 細分類 | どんな事業所か |
|---|---|---|
| サービス業 | 8821 産業廃棄物収集運搬業 | 事業活動で出た廃棄物を集めて運ぶ |
| サービス業 | 8822 産業廃棄物処分業 | 集められた廃棄物を処分する(例示に「廃プラスチック類処理業」) |
| 卸売業 | 5369 その他の再生資源卸売業 | 再生資源を集めて選別し、卸売する(例示に「プラスチック再生資源卸売業」) |
| 製造業 | 1851 プラスチック成形材料製造業 | 回収プラスチックなどを配合・混和して成形材料をつくる(例示に「再生プラスチック製造業」) |
| 製造業 | 1852 廃プラスチック製品製造業 | 廃プラスチックを原料に、くい・柵・魚礁などの製品をつくる |
面白いのは、5369の説明に「ここには入らないもの」として、8822・1851・1852の3つが名指しで並んでいることです。
同じ廃プラスチックを扱っていても、処理するのか、選別して売るのか、材料につくり変えるのかで、分類がはっきり分かれています。
ただし、総務省は日本標準産業分類のページで、この分類は統計の結果を表示するためのもので、個々の産業を認定するものではないと断っています。
実際、一つの会社が処理も製造も手がけていることは珍しくありません。
求人票の業種欄は、あくまで入口の手がかりと考えてください。
分かれ目は「お金をもらって引き取るか、お金を払って買うか」
もう一つの物差しが、廃棄物処理法です。
廃棄物処理法では、事業活動で出た廃プラスチック類は産業廃棄物にあたります。
その収集運搬や処分を仕事として行うには、原則として都道府県知事などの許可が要ります。
では、工場から出た端材を買い取って再生材料にする会社はどうなるのか。
ここで出てくるのが「廃棄物か、有価物か」という線引きです。
環境省の行政処分の指針(2021年4月の通知)では、廃棄物かどうかを次の5つの要素から総合的に判断するとしています。
- 物の性状
- 排出の状況
- 通常の取扱い形態
- 取引価値の有無
- 占有者の意思
かみくだくと、出す側が処理料金を払って引き取ってもらうなら廃棄物の処理です。
受け取る側がお金を払って買い取り、その取引に経済的な筋が通っていれば、有価物として扱われます。
気をつけたいのは、同じ指針が廃プラスチック類を名指しして、有償で譲る契約があるだけで直ちに有価物と判断しないよう求めている点です。
お金の流れは大事な手がかりですが、それだけで白黒がつくわけではありません。
もう一つ、制度の動きも押さえておきましょう。
2026年6月に公布された改正廃棄物処理法では、廃棄物ではない使用済みの金属・プラスチック物品についても、保管や再生を行う事業に許可制を入れることになりました。
環境省の発表では、この部分の施行は公布から2年6か月以内で、対象の細かい範囲は今後政令で決まります。
「有価物だから許可とは無縁」という理解は、数年のうちに変わるかもしれません。
同じ「リサイクル」でも仕事の中身はこれだけ違う
働く人にとって大事なのは、分類の名前より、毎日どんな作業をするかです。
私が求人紹介や工場見学で見てきた範囲で、一般的な傾向をまとめました。
会社による差が大きいので、目安として読んでください。
| 業態 | 主な仕事 | 関係しやすい資格 | 現場の特徴 |
|---|---|---|---|
| 収集運搬 | 排出元を回って廃棄物を積み込み、処理施設まで運ぶ | 中型・大型免許 | 1日の大半が運転と積み下ろし |
| 中間処理(処分) | 受け入れた廃棄物の選別、破砕、圧縮、焼却など | フォークリフト、車両系建設機械 | 手選別の工程では臭いや粉じんが出やすい |
| 再生資源の卸 | 買い取った資源の仕分け、梱包、出荷 | フォークリフト | 倉庫作業に近い |
| 再生材料の製造 | 砕いた原料を押出機で溶かし、ペレットにして検品する | プラスチック成形技能士 | 機械の運転と監視が中心で、交替制の工場もある |
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」でも、プラスチック成形の仕事は自動化が進み、機械の監視が中心になっていると説明されています。
機械を止めずに動かす工場では、3交替制をとる場合もあるそうです。
体力的なきつさは、どちらが上とは一概に言えません。
収集運搬は時間に追われやすく、製造は夜勤がつらいという人もいます。
自分の生活リズムに合うのはどちらか、という目で見るのがおすすめです。
製造の側の仕事がどれくらいあるのか、規模感にも触れておきます。
プラスチック循環利用協会が2025年12月に公表した資料では、2024年に国内で出た廃プラスチックは911万トンでした。
そのうち、再生材料などにつくり変えるマテリアルリサイクルは20%で、67%は燃やして熱や電気として回収されています。
2026年4月には改正資源有効利用促進法が施行され、自動車や家電などの大手メーカーに、再生プラスチックの利用計画の提出を求める仕組みが始まりました。
良質な再生材を安定してつくれる工場の出番は、これから増えていくと私は見ています。
求人票と会社のホームページで見分ける4つの手がかり
事業内容欄のことばを拾う
求人票の職種名は「製造スタッフ」「軽作業」とあいまいなことが多いので、事業内容の欄を読みます。
次のようなことばが出てきたら、どちら寄りの会社かおおよそ見当がつきます。
- 「収集運搬」「マニフェスト」「積替保管」は、廃棄物処理の側
- 「中間処理」「破砕」「焼却」「最終処分」も、廃棄物処理の側
- 「有価買取」「スクラップ」「再生資源」は、卸売の側の可能性がある
- 「再生ペレット」「押出機」「成形材料」「コンパウンド」は、製造の側
ハローワークインターネットサービスでは、フリーワード検索の対象を「事業内容」に絞れます。
「再生ペレット」で絞り込むと、製造寄りの会社を探しやすくなります。
許可番号の4桁目を見る
廃棄物処理業の許可を持つ会社は、ホームページに許可番号を載せていることがよくあります。
環境省の許可番号等取扱要領によると、許可番号は11桁で、4桁目が業の種類を表します。
| 4桁目 | 業の種類 |
|---|---|
| 0 | 産業廃棄物収集運搬業(積替なし) |
| 1 | 産業廃棄物収集運搬業(積替あり) |
| 2 | 産業廃棄物処分業(中間処分のみ) |
| 3 | 産業廃棄物処分業(最終処分のみ) |
| 4 | 産業廃棄物処分業(中間・最終とも) |
| 5〜9 | 特別管理産業廃棄物の同じ区分 |
4桁目が0や1の番号だけなら運ぶ仕事が中心、2や4があれば処理施設を持っている会社と読めます。
許可番号が見当たらなくても、許可がないとは限りません。
気になるときは、公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団の「産廃情報ネット」で会社名から調べられます。
面接でお金の流れを聞いてみる
面接の逆質問で、原料がどこから来るのかを聞くのも手です。
私が面接官だったころ、この質問をしてくる応募者は、仕事をよく調べてきた人だと感じていました。
たとえば、こんな聞き方があります。
「原料となるプラスチックは、どのような取引先から、どういう形で仕入れているのでしょうか。」
「引き取りのときに処理費をいただく形ですか、それとも買い取りですか。」
答え方から、会社が自分たちの事業をどう位置づけているかが見えてきます。
原料の話を具体的に、うれしそうに語ってくれる会社は、現場の工程にも自信を持っていることが多いものです。
工場見学では五感を使う
内定の前に工場を見せてもらえるなら、ぜひ足を運んでください。
見ておきたいのは次の点です。
- 臭いや粉じんがどの程度あるか、作業着を会社で洗ってもらえるか
- 機械の音の大きさと、耳栓などの保護具が支給されているか
- フォークリフトと人の通路が分かれているか
- 原料置き場に何が積まれているか
原料置き場を見ると、その会社が何を受け入れているのかが一目でわかります。
樹脂ごとにきれいに仕分けされた端材が並んでいるのか、いろいろな物が混ざった状態で届くのかで、現場の作業はかなり変わります。
例として、日本保利化成株式会社の場合
具体例を一つ紹介します。
群馬県太田市に本社工場を置く日本保利化成株式会社は、公式サイトによると2018年設立のプラスチックリサイクルの会社です。
公式サイトでは、工場から出る廃プラスチック(PIR)と、家電製品など使用済みのプラスチック(PCR)を有価で購入し、再生プラスチックのペレットを生産していると説明しています。
扱える樹脂は50種類以上とされています。
製造工程は破砕・粉砕、押出成型、冷却、切断の順で、押出機9台やフォークリフト5台などの設備も公開されています。
2025年4月には、再生材の国際認証であるGRS(グローバル・リサイクル・スタンダード)を取得したそうです。
ここまでの手がかりに当てはめると、事業内容には「有価で購入」「再生ペレット」「押出」ということばが並びます。
日本標準産業分類でいえば、1851の再生プラスチック製造業に近い姿です。
現場の仕事も、原料の選別と機械の運転が中心になると読めます。
一方で、この会社の業種表示を第三者のデータベースで調べると、ある地図サービスの電話帳では「清掃・廃棄物処理業」、別の地図サービスでは「再生資源リサイクル業」でした。
業界団体の会員名簿では「リサイクル」と「材料」の分野に入っています。
同じ会社でも、どこを見るかで業種の名前が変わるわけです。
業種名だけで判断せず、公式の情報まで確かめることの大切さがよくわかる例だと思います。
個人的な縁もあります。
国税庁の法人番号公表サイトによると、同社は2018年から2022年まで、私の住む市原市の姉崎海岸に本店を置いていました。
調べものの途中で見慣れた地名が出てきて、少し驚きました。
募集の状況は時期によって変わるので、関心のある方は日本保利化成株式会社の採用情報ページをのぞいてみてください。
まとめ
「廃棄物処理」と「リサイクル製造」は、国の産業分類ではサービス業と製造業に分かれる別の産業です。
分かれ目になるのは、処理料金をもらって引き取るのか、お金を払って原料として買うのかというお金の流れです。
ただし廃プラスチックの場合は契約の形だけでは決まらず、制度も2026年の法改正で変わろうとしています。
求人票を見るときは、次の4つを確かめてみてください。
- 事業内容欄のことば
- 会社のホームページにある許可番号の4桁目
- 面接で聞く原料の仕入れ方
- 工場見学で見る原料置き場と作業環境
どちらの仕事にもそれぞれの大変さとやりがいがあり、どちらも資源を回すうえで欠かせない仕事です。
名前のイメージで選ばず、中身を知ってから選んでほしいと思っています。
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